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低気圧低酸素に対する心反応: エベレスト登頂後の心容量、心機能、エネルギー代謝の持続的変化 【海外最新研究紹介】 [健康]

【論文要旨】

研究者らは心臓における高エネルギーのリン酸塩代謝の変化が低気圧低酸素環境に起因する心筋機能不全の基になっている可能性があると仮定した。


健康的なボランティア被験者14人を対象にしたエベレストのベースキャンプ(標高5,300m)17日間の登頂計画で、登頂直前、帰還後4日以内にキャンプにおいて31P磁気共鳴スペクトロスコピー(分光法)をもちいて心ホスフォクレアチン(PCr)/ATPが測定され、MR(磁気共鳴)イメッジ、心エコーを用いて、心容量と心質量、心機能が測定された。


エベレストから帰還直後、被験者の総体重は3%(P<0.05)減少した。しかしながら、左室容量(体表面積に於いて調整)は11%(P<0.05)不均衡に低下した。水分補給条件の変化なしで、心拡張期の心機能変化が、ピーク左室充満レートが17%(P<0.05)、僧帽弁流入E/Aが11%(P<0.05)それぞれ減少した。登頂前と比較して、心臓PCr/ATP比は18%(P<0.01)減少した。

高所環境に於いてこれらの異常がより大きいものであったか否かは未詳であるが、これら全ての変化は帰還後6ヶ月で登頂以前のレベルに回復した。心臓形態学的にも、心機能的にも、あるいはエネルギーレベル的にもこれらの変化は慢性低酸素症患者の症状と類似しているものであった。

このように、心PCr/ATP比の減少は、健常者における低酸素誘導性の心機能不全や心疾患患者の心機能不全の前提となるような、低酸素状態における一般的な反応である可能性がある。

出典『米国実験生物学会連盟雑誌』2011.1.31

"Cardiac response to hypobaric hypoxia: persistent changes in cardiac mass, function, and energy metabolism after a trek to Mt. Everest Base Camp"

1. Cameron J. Holloway*†,1,Hugh E. Montgomery‡,Andrew J. Murray*†,2Lowri E. Cochlin*†,Ion Codreanu†Naomi Hopwood*,Andrew W. Johnson*†,Oliver J. Rider†,
   2. Denny Z. H. Levett‡Damian J. Tyler*†,Jane M. Francis†,Stefan Neubauer†,Michael P. W. Grocott‡,Kieran Clarke* and for the Caudwell Xtreme Everest Research Group

Author Affiliations

  1. *Department of Physiology, Anatomy, and Genetics and
  2. The University of Oxford Centre for Clinical Magnetic Resonance Research, University of Oxford, Oxford, UK; and
  3. University College London (UCL) Centre for Altitude, Space, and Extreme Environment Medicine, London, UK

FASEB Journal 2011.1.31(Early Access)

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